HOME > エネルギー管理士試験 > 平成18年 電気機器 問10(2)
サイリスタを用いた三相ブリッジ整流回路の負荷時の直流平均電圧Vd[V]は、交流側線間電圧をV[V]、直流平均電流をId[A]、制御遅れ角をα[rad]、転流リアクタンスをX[Ω]として、概略次式で表される。
\[V_d = \frac{3\sqrt{2}}{π}Vcosα - \frac{3XI_d}{π}\]この整流回路で、交流側に定格容量1000kVA、直流巻線線間電圧600V、短絡インピーダンス10%の変圧器を接続し、 制御遅れ角α=π/12[rad](=15°)、直流平均電流Id=1000Aで運転したときの直流平均電圧Vdを計算する。 ただし、転流リアクタンスは変圧器の短絡インピーダンスのみとする。
転流リアクタンス(変圧器の短絡インピーダンス)をオーム値に換算すると[A a.b×10^-2Ω]であり、一方、cos(π/12)は、
\[cos2α=cos^2α-sin^2α=[9]-1\]の公式を用いれば、[B a.bc×10^-1]と計算される。 よって、直流平均電圧Vdは[C a.bc×10^2V]となる。
整流器に流れる電流を、重なり角が零の方形波とすれば、 変圧器二次側の直流巻線には、毎周期ごとに、直流電流が2π/3[rad]の周期、角度π[rad]だけずれて、 正及び負方向に流れるので、変圧器二次側の線電流の実効値I2[A]は、
\[I_2=\sqrt{\frac{1}{π}\int_0^\frac{2π}{3}I_d^2dθ}\]となり、
\[交流側からみた総合力率=\frac{V_d・I_d}{\sqrt{3}・V・I_2}\]は、[D a.bc×10^-1]となる。
【解説と解答】
A
変圧器の短絡インピーダンス%Zは、
\[変圧器の短絡インピーダンス%Z=\frac{定格電流×変圧器のインピーダンス}{定格電圧}=\frac{3VI×変圧器のインピーダンス}{3V^2}\] \[0.1=\frac{1000kVA×変圧器のインピーダンス}{3・(600V/\sqrt{3})^2}\] \[変圧器のインピーダンス=3.6×10^{-2}Ω…A\][9]
\[cos2α=cos^2α-sin^2α=cos^2α-(1-cos^2α)=2cos^2α-1=[9]-1\]B
\[cos2α=2cos^2α-1\] \[cos 30°=2cos^2 15°-1\] \[\frac{\sqrt{3}}{2}=2cos^2 15°-1\] \[cos 15°=\sqrt{\frac{\frac{\sqrt{3}}{2}+1}{2}}=0.9659…9.66×10^{-1}B\]C
直流平均電圧Vdは、
\[V_d = \frac{3\sqrt{2}}{π}Vcosα - \frac{3XI_d}{π}=\frac{3\sqrt{2}}{π}600cos15° - \frac{3・0.036・1000}{π}=748.6V…7.49×10^2C\]D
変圧器二次側の線電流の実効値I2[A]は、
\[I_2=\sqrt{\frac{1}{π}\int_0^\frac{2π}{3}I_d^2dθ}=\sqrt{\frac{1}{π}I_d^2\int_0^\frac{2π}{3}dθ}=\sqrt{\frac{1}{π}I_d^2\frac{2π}{3}}=\sqrt{\frac{2}{3}}I_d=\sqrt{\frac{2}{3}}1000A\]交流側からみた総合力率は、
\[交流側からみた総合力率=\frac{V_d・I_d}{\sqrt{3}・V・I_2}=\frac{748.6・1000}{\sqrt{3}・600・\sqrt{\frac{2}{3}}1000}=0.8822…D\]