15.7.23

平衡ケージ巻上機 - 不平衡荷重、慣性モーメント - エネルギー管理研修修了試験[電気分野]2006年(平成18年)問9(1)(2)

maxima

次の各文章の[1]~[10]の中に入れるべき最も適切な字句、数値または式を解答群から選び、 解答例にならってその記号を答えよ。なお、同じ記号を2回以上使用してもよい。

(解答例 11-サ)


【平衡ケージ巻上機における不平衡荷重】

(1)図1は平衡ケージ巻上機をモデル化したものである。巻胴の左右には同一仕様の運搬車 (それぞれの質量はWt[kg])を載せたケージ(それぞれの質量はWc[kg])がワイヤーロープ (単位長さ当たりの質量w[kg/m])を介して吊り下がっており、図1(a)で巻胴に向かって右側の 運搬車のみに積荷(質量WL[kg])が積載されている。最終的な巻上距離をl[m]とすると、 積荷とワイヤロープの不平衡分が不平衡荷重であることから、ケージが停止位置から 距離x[m]離れた位置にある場合の不平衡荷重W0=[1]kgである。図1から明らかなように、 x=[2][m]ではワイヤロープの不平衡分は零となり、積荷のみが不平衡分となる。ただし、 荷重はすべてロープにより保持されており、ロープにたるみはないものとする。

【解答と解説】

x=0において、不平衡荷重

\[W_0|_{x=0} = (W_L+W_C+W_t+l・w)-(W_C+W_t)=W_L+l・w\]

x=lにおいて、

\[W_0|_{x=l} = (W_L+W_C+W_t)-(W_C+W_t+l・w)=W_L-l・w … [3] \]

xにおいて、

\[W_0 = (W_L+W_C+W_t+(l-x)・w)-(W_C+W_t+x・w)=W_L+(l-2x)w … [1] \]

ワイヤロープの不平衡部分は、

\[W_{0(ワイヤロープ)}=(l-2x)w\]

x=l/2のときワイヤロープの不平衡部分は零となる。


【平衡ケージ巻上機における慣性モーメント】

(2)図1で不平衡荷重には巻胴の左右の質量の差が関係するのに対し、システム全体の 等価慣性モーメントには左右の質量の和が関係する。胴巻の半径をr[m]、 ワイヤロープの全体の質量がwl[kg]で近似できるものとすると、直線運動系の巻胴軸に換算した 慣性モーメントJ0=[4][kgm2]である。

【解答と解説】

回転軸から半径r[m]の距離に質量m[kg]の質点があるとき、 この質点のこの軸に対する慣性モーメントJ[kgm2]は次式で表される。

\[J=mr^2\]

本設問でケージ、運搬車、積荷およびワイヤロープはいずれも半径r上に分布しているので、 mは運搬車、積荷およびワイヤロープの全質量となる。したがって、

\[m=W_L+2(W_c+W_t)+wl\]

巻胴軸に換算した慣性モーメントJ0は、

\[J_0=mr^2=(W_L+2(W_c+W_t)+wl)r^2 …[4]\]

(3)図2は巻上機の運転パターンの一例を示したものである。図1(a)の状態から一定加速度α[m/s2] でt1[s]の間加速し、一定速度vmax[m/s]でt2[s]の間運転する。その後、一定加速度β[m/s2](β<0) でt3[s]の間減速して図1(c)の状態でケージを停止させる。この運転パターンで、α=0.2m/s2、 t1=t2=t3=20sとすると、図中のvmaxは[6]

【解答と解説】

\[v(t)=\int α(t) dt=αt\] \[v(t_1)=\int_{0}^{t_1} α(t) dt=[αt]_{0}^{t_1}=α・t_1\] \[v_{max}=v(t_1)=α・t_1=0.2[m/s^2]・20[s]=4[m/s] …[6] \]

【電動機の回転速度、トルク、出力】

(4)減速機(減速比=電動機の回転速度/巻胴の回転速度=50)を介して 電動機により巻上機の巻胴を駆動する場合を考える。 巻胴半径rが1[m]、巻上速度が3.14[m/s]一定のとき、 電動機の回転速度は[8][min-1]である。

【解答と解説】

\[巻胴円周の長さ=2πr=2・3.14・1 [m]\] \[巻胴の回転速度=巻上速度/巻胴円周の長さ= 1/2 [周/s] = 60/2 [周/min] \] \[電動機の回転速度=減速比・巻胴の回転速度=50・60/2 [周/min]=1500[周/min] …[8]\]